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なんだか前の方が騒がしい。
笑い声が届いてきて、灯世は首を傾げた。
笑える雰囲気ではないはずなのに。
「芦多の隊だねぇ。」
爪鷹も不思議そうだ。
「あの人、なにやってんだろね。」
爪鷹の物言いに、灯世はくすくすと笑った。
そして、後ろの方に遠ざかっていく屋敷を振り返る。
まだ少ししか歩いていないのに、初めて砂利道を歩く灯世にはもうだいぶ歩いたように感じられた。
しかも、歩く速度が速いのだ。
爪鷹は涼しい顔をしているが、正直灯世にはきつかった。
何故誰も弱音を吐かないのだろう。
歩兵などは重い鎧を身に着けている。
爪鷹は軽装備だからいいとしても、彼らにはつらいはずだった。
甘かった。
屋敷の中しか知らない灯世が、芦多についていけるわけがない。
まだまだ自分は何もわかっていない。
密かにため息をつく。
自分に失望したが、闘志が燃える。
もっと、もっともっと、芦多に追いつきたい。
灯世は脚に力を込めた。
が、足の裏が痛い。
砂利道を歩くのに慣れていない脚が憎かった。
「灯世、大丈夫?」
「はい。」
爪鷹が心配そうに灯世を覗き込んでいる。
慌てて灯世は笑顔を見せた。
「疲れたら言って?
きっと灯世にはつらいってわかってるから。
遠慮しないでね。」
「はい…。」
爪鷹は笑って灯世の肩に手を置いた。
その仕草が、少しぎこちない。
きっと、私を安心させるために慣れないことをしてくださったんだ。


