この空の彼方

「僕が何のためにここにいるのかわからないじゃないか!」



泣き叫ぶような声に、ハッとする。



自分もそう思った日があった。



芦多にはこの子の気持ちが手に取るようにわかった。



「芦多様、もう諦めたほうが…。」


「うむ…。」



兵の言葉に悩む。



…このまま屋敷で小間使いのようにこき使われて一生を終えるのと、戦場で散るのとではどちらがこの子にとって良いのだろう。



正直、この子の出番はもうきっとない。



主人のいない型など、なんの役にも立たない。



「利都、最終決定をさせてやる。」



利都はぱあっと顔を輝かせた。



「戦地で死ぬか、この屋敷で死ぬか。
どちらか自分で決めろ。」



それは少々惨いでのは、と兵が芦多の耳元に囁く。



芦多は聞こえないふりをして、利都に視線を向ける。



「行く。」



どうやら本当は我の強いらしい利都は、きっと芦多を仰ぎ見た。



「いいだろう。
自分の言った事を忘れるな。」



灯世が知ったらどうなるんだろう。



きっと意地でも利都を屋敷に送り返すに違いない。



芦多は調子に乗って、芦多より前を歩く利都を見ながら思った。



…怖いのかあまり離れないところがまだ可愛げがある。



ふと、辰清が頭をよぎった。



あの子が生きていたら、丁度この年なんだろう。



少しきつい顔をしている利都とは違って、灯世に似た丸い目なんだろうなと想像する。



駄目だ。



こんなことを考えていたら指揮に影響する。



「利都。」



呼びかけると、利都は問うような目を芦多に向けた。



「あまり離れるな。
危ないぞ。」



利都は素直に芦多の後ろに戻ってきた。