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朝靄の中、式は粛々と進められていく。
芦多は出向くという実感のないまま朝を迎えた。
綺麗な着物に着替えさせられ、隊の最前列に並んでいる。
なんだか後ろに人間を控えさせていると思うと変な気分だった。
落ち着きなく腰の太刀をいじる。
装飾の部分を常に指で触っていた。
そわそわしている理由の一つに、灯世があった。
さっきから姿が見えない。
てっきり、前に並ぶものかと思っていたのだが。
「芦多、しっかり。」
見兼ねた爪鷹が小声で芦多を叱る。
「お前は隊長なんだぞ。」
「ああ。」
お前もな、爪鷹。
爪鷹も一緒でよかった。
もし一人でこんなところに立っていたらと思うと気がおかしくなりそうだった。
「あ、灯世。」
爪鷹の言葉に顔を上げる。
少し化粧をした灯世が、辰之助の隣に立っていた。
「なんだか色っぽいね。」
芦多は言葉もなくただ頷いた。
綺麗だ。
紅を差した唇がなんとも言えない色気を醸し出していた。
「ったく、気に入らない。」
毒づいた爪鷹にギョッとする。
「何だ!?」
灯世を褒めたと思ったら…。
「あぁ、俺が言ってるのは辰之助様だよ。
灯世を隣に置いてデレデレしちゃってさ。」
プクッと頬に空気を入れる爪鷹。


