この空の彼方

からかいがいがあって、やめられない。



着替えていると、後ろから灯世の厳しい声が飛んだ。



「あんまり意地悪すると、もうこんなの無しですからね。」


「こんなの?」



着替えを終えた芦多は灯世の正面にしゃがみ込む。



「手を握ったり。」


「手もか?」


「口付けも禁止ですよ。」


「…それは。」


「もちろん、昨夜のような、その、あれは…。」



どもった。



たまらずまた吹き出す。



「とにかく、私に指一本触れないでくださいね。」



憤然と灯世は言い放つ。



「ゆ、指一本!?」


「当たり前です、お仕置きなんですからね。」



つんと灯世はそっぽを向く。



まさか、本気か?



芦多は慌てて灯世の肩に手をかける。



ぱっとそれは振り払われた。



嘘だろう…。



芦多は呆然と灯世を見つめた。



こんな快感を覚えたのに、口付けはおろか手を繋ぐ事も…。



灯世がくすりと笑って振り向いた。



未だ状況がつかめず、芦多は近づいてくる灯世を目で追った。



「驚きました?」



言いながら灯世は飛び跳ねるようにして芦多に口付けた。



背が足りないので一瞬だったが。