この空の彼方




隣では灯世が静かに眠っている。



灯世を腕に抱きながら眠れる日がくるなんて、思いもしなかった。



傍にいるだけでいいと思ったのに、もう手放したくはない。



屋敷に帰ったらどうなるのだろうと思うと、憂鬱だった。



きっと、今まで以上に無償に灯世に会いたくなるに違いない。



無意識に手が灯世に伸びる。



ゆっくりと頭を撫でた。



さらさらと、指に髪がまとわりつく。



芦多は灯世の髪を梳くのも好きだった。



ぴくりと灯世が身動きした。



ハッとして手を止める。



息を殺してみていると、灯世はゆっくりと目を開けた。



「起こしたか。」



すまなく思う。



灯世は寝ぼけ眼で首を振った。



「芦多様…。」



灯世に名前を呼ばれるのはもう何度目だろう。



今夜だけで、さっきだけで三十の桁には届いている。



「なんだ。」



芦多はくすりと笑って、灯世の後頭部に手をやる。



予想通り、灯世は芦多の胸に顔を埋めた。



力が出ないらしく、動作がゆっくりなのでそれを手伝ってやる。



灯世は照れたように笑った。



「大丈夫か、つらくないか?」



よく考えたら、芦多はなんて惨いことをしたんだろう。