この空の彼方

「まったく…。」



布団に座り、芦多は顔を覆った。



吐き出す息が震えている。



…心配させた。



なんだか二重に申し訳ない。



灯世はすべるようにして芦多の隣に寄った。



「本当に、すいませんでした。
私、芦多様を疑ったわけではないんです。」



芦多が無表情な顔を向ける。



心臓が締め付けられるような不安に襲われたが、灯世は懸命に続けた。



「ただ、あんまり女の扱いに慣れているように思われたので…。」



芦多は暗いため息をついた。



話す、と力なく呟く。



「確かに私は何人もの女を抱いた。」



ちくり、と胸が痛む。



でも、納得は出来た。



こんな完璧な人を放っておく女性なんていやしない。



「しかし、さっきも言ったように、愛した女はお前だけだ。
仕事やら、情報集めやら、貴族の女の命でそうしたことはあった。
だが、私だってしたくはなかった。」



罪悪感を感じた。



芦多に何を望んでいたのだろう。



「ただ、これだけは言っておく。
昔も、きっとこれからも、灯世以上に望む相手はいない。」



私もです。



そう言おうとして、涙がこぼれた。



芦多が慌てたように灯世を呼ぶ。



灯世は顔を覆って首を振った。



「芦多様に申し訳なくて。
私が少し、やきもちを焼いたから、不安になったから。」


「泣くな、謝るな。
私はわかってもらえればそれでいいんだ。」



芦多は灯世を優しく抱き寄せた。