この空の彼方

ふと、灯世は口を開いた。



「芦多様は、私のもの。」


「え?」



芦多が怪訝な顔で眉根を寄せる。



「房姫様が、言い残された言葉です。」



芦多の表情が消える。



「芦多様。」



灯世は芦多の頬に手を伸ばした。



気付いた芦多が灯世の手に手を重ねる。



「今、この瞬間だけ、誰のものでもない私のものですよね?」



辰之助のものでも、辰太郎のものでも、房姫のものでもない。



私を見ていてくれるかしら。



芦多はフッと笑った。



「今この瞬間だけに限らず、私は灯世のものだ。」



芦多の身体が動いた。



顔が近づいてくる。



この距離でさっきのことを思い出すかと思ったが、怖さはなかった。



灯世は期待して目を閉じる。



唇に芦多の唇が重なったとき、何とも言えない幸福感が灯世を満たした。



一度では終わらない。



芦多は夢中で灯世に口付けた。



灯世が苦しくなるほどに。



こんなに長くしたことはなくて、灯世の心臓は大きく音を立て始めた。



芦多の着物をギュッと握る。



少し怖くもあったが、その先にいきたくて。



灯世は自分からも口付けた。



芦多は少し驚いたようだったが、灯世の背中に手を回し、いっそう激しく口付けた。



いつの間にか、芦多の体制は変わっていて。



灯世に覆いかぶさるようになっていた。