この空の彼方

熱湯がヒリヒリとしみる。



灯世は目をつぶって顔まで湯に浸かった。



身体が清まるように願う。



「聞こえるか灯世!」



いきなり芦多の声が聞こえ、灯世は勢いよく湯船から顔を出した。



「芦多様!?」


「ああ。
隣り合っているようだ。」



天井を見上げるとなるほど、向こう側からも湯気が上がっていた。


近くに芦多がいると思うと、気持ちが弾んだ。



ザブザブと湯をかきわけて、壁際に向かう。



コンコンと木の壁を叩いてみた。


すぐに同じように湯が波を立てる音がして、木の壁が振動した。



「薄い壁だな。」



おかげで声がよく通る、と芦多は満足そうだ。



「大丈夫か、気分は悪くないか?」


「はい。」


「そうか、よかった。
私はもう逆上せたから先に出るが、灯世はゆっくり身体を温めてこい。」



自分も出ると言おうとしたら先を越された。



「身体がかなり冷えていた。
ゆっくりしてこい。」



少し叱るような口調で言われ、灯世はようやくはいと言った。



うむ、と芦多が満足そうに頷く気配がして、湯船から上がったらしい音が聞こえた。



それを聞きながら、灯世は泳ぐようにして湯に浸かった。



立っていたせいで少し肩が冷えた。



熱い湯が身体の冷えを氷のように溶かしていく。



心地よかった。



しばらく温泉を堪能した後、灯世は風呂から上がった。



上がってしばらくしても、身体がぽかぽかと温かい。



身体の芯まで温まるとは、まさにこのことだ。