この空の彼方

パタンと戸を閉めると、芦多は荷物を壁際に置き、灯世を座らせた。



灯世が正座をするのを見届け、芦多は手探りで行灯をつけ、布団をひいた。



用意を終え、一つ息をつくと、芦多は灯世のもとへ戻ってきた。



「風呂に入るか。」



おいで、と手を引かれて、風呂場に向かう。



芦多は女湯の前で立ち止まった。



「私はここで待っている。
ゆっくりしておいで。」



芦多の手が灯世の顔を撫でた。



安心する。



灯世はここでやっと口を開いた。



「それでは芦多様に悪いです。
芦多様も入ってください、私は大丈夫ですから。」



芦多は困ったような顔をした。



きっと汗もかいたし、入りたいだろう。



が、灯世を心配してくれている。



葛藤しているのがはた目にもわかった。



「本当に、大丈夫ですから。」



促すと、ようやく芦多は頷いた。



「もし何かあれば大声で叫べ。」



はい、と頷いて、浴衣を受け取った。



芦多の手が一度灯世の頭を撫で、離れた。



灯世は浴衣を胸に抱えて女湯に入った。



幸い、夜遅いせいか人気はなかった。



灯世は一番近くの棚に着物を脱ぐと、早速湯船に向かった。



勢いよく湯を身体にかける。



何もかも、洗い流したかった。



ごしごしと身体を擦る。



触られた部分をすべて。



舐められた首筋も、触られた胸も、押さえつけられた脚も。



皮膚がこすれて赤くなる。



それでも灯世はこすり続けた。



これでもかと身体を洗い流したあと、湯船に浸かった。