この空の彼方

「芦多様、いつも助けてくださってありがとうございます。」


「何をいきなり。」



芦多は笑ったが、灯世は真剣に芦多の頬に手を添えた。



灯世の真剣さに、芦多は足を止める。



「本当に、すみません。
私、芦多様に殺人を犯させてしまった…。」


「違う。」



自分がしたくてした殺人だ。



それに、たいして堪えてはいない。



「私こそ謝らなければいけない。」



灯世が怪訝な顔で芦多を見上げた。



「私のせいで房姫はお前を目の敵に…。」



ぐっと唇を噛む。



以前から房姫が芦多を気に入っているのは知っていた。



そして、芦多と親しい灯世を羨んでいたことも。



それでも、自分は執拗に灯世を見つめ続けた。



「そんなことを言うなら私こそ。
辰之助様がなさったこと、忘れてはいないでしょう?」



芦多は口をつぐんだ。



「おあいこですよ。」


「……うん。」



灯世が首に手を回して抱きついてきた。



今日はやけに甘えるな。



芦多は灯世を抱く腕に少し力を込め、山を下った。