芦多は荒い息を整えた。
周りには男の骸が二つ、転がっている。
刀の切っ先が血濡れて鈍く光っている。
芦多は無感情にそれを拭った。
布を茂みに投げ捨てる。
太刀を収めると芦多は死骸には目もくれず歩き出した。
幸い、着物に返り血は浴びていない。
芦多は急いでみんなのもとを目指した。
茂みをかきわけて平地に出る。
爪鷹と耶粗は芦多をみとめると警戒を解いた。
「お疲れさん。」
爪鷹が自分の隣を叩く。
芦多は言われた通りに腰を下ろした。
「どう、始末した?」
「あぁ。」
「いたぶってやったんだろ。」
隣から耶粗が口を出す。
芦多は無言で頷いた。
助けてくれと懇願する顔が瞼の裏に浮かぶ。
そんな命乞いをするのなら始めから灯世に手を出さなければいいものを。
「芦多?」
心配そうな千歳の声が意識を戻させる。
「なんだ?」
「いや。
俺達、先に帰るから。
芦多は灯世が落ち着くまで一緒にいてやれよ。」
灯世がピクリと反応した。
「内緒で帰ってこいよ?
今晩はよそに泊まるかお前の部屋に入れてやれよ?」
芦多はゆっくり頷いた。
内密に灯世を連れ帰った方が安全だ。
「じゃあな、灯世。」
爪鷹が灯世の肩から腕の離した。
途端に灯世が不安そうに身を縮める。
「じゃあな。」
耶粗は芦多が渡した刀を腰に差すと、歩き去った。
千歳と耶粗もそれに続く。


