この空の彼方

「房姫め、絶対わざと灯世を置いて山を出たんだ。」


「…そう考えるのが妥当だな。」



よほどのことがない限り、はぐれはしない。



そもそも経験豊富なお目付け役が一緒にいたのに、はぐれようがない。



しかも、目を向ける相手はたった二人だったのだ。



たった数時間、女二人の面倒を見切れないなんてよっぽどの能無しだ。



「やっぱあの時に殺しておくべきだったな。」



耶粗が舌打ちして近くの木を蹴る。



背の高い木がみしりと音を立てた。



それを横目に見ながら、芦多は歩を進める。



「耶粗、早く探そう。」


「ああ、悪い。」



耶粗が早足に追い掛けて来る。



ところが芦多のすぐ後ろにつくと、耶粗はピタリと立ち止まった。



芦多は不審に思い、振り返る。



「耶粗?」


「しっ。」



歯の隙間から鋭い息を吐き、耶粗は目を閉じた。



「何か聞こえる。
……千歳の声みたいな。」



言われて芦多も耳を澄ます。