この空の彼方




「どこだよ。」



千歳は目の前に茂っている草を凪ぎながら、灯世の名前を叫ぶ。



耶粗は刀を両手に構え、芦多の後ろをついてくる。



いわゆる用心棒だ。



カサッと、草が揺れた。



みんなの顔つきが変わる。



爪鷹が前に出た。



芦多をくいっと顎でしゃくり反対側にいけと合図する。



芦多は目で頷いて、滑るように歩いた。



誰だ?



灯世ではないはずだ。



爪鷹と平行に歩く。



合図を出して、芦多は草をかきわけた。



そこにいたのは、兎だった。



「なーんだ。」



千歳がため息をつく。



だが、油断は禁物だ。



夜の山で、危なくない山などない。



「こっから二手に分かれて探そうぜ。」



耶粗が刀を下げ、芦多のそばに立った。



「そうだな。
くれぐれも気をつけてくれ。」


「あぁ。
じゃ、千歳は俺と。
芦多は耶粗と。」



爪鷹の指示で、芦多は耶粗と共に山に分け入った。



「不気味だな〜。」



耶粗はうへぇ、と顔をしかめる。



「俺、夜の山なんて二度と来ないぞ。」


「ああ。
私も御免だ。」


「……灯世、心細いだろな。」



その言葉に芦多はピタリと足を止めた。



そうだ。



一人取り残され、どんな思いをしているか…。