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夜になっても、灯世が帰ってこなかった。
騒ぐ辰之助の言葉を聞いて、芦多は気を失いかけた。
千歳に支えられなかったら本当に倒れるところだった。
房姫と、山?
どう考えても危なすぎる。
逆に無事に帰ってくるほうがおかしいくらいだ。
どうして、どうして山なんかに行くんだ…ッ!
呼吸が荒くなる。
息を吸うのが苦しい。
「芦多、しっかりしろ。」
爪鷹が芦多を揺さぶる。
それでも芦多の焦点は合わなかった。
「駄目だ、芦多。
しっかりしろって。」
芦多は頭を抱えた。
何も考えられない。
襲ってくるのは恐怖だ。
房姫はもうお付きと一緒にとっくに帰ってきているのに、灯世だけが行方不明だ。
絶対おかしい。
もしかしたら、もう…。
最悪の事態が頭に浮かぶ。


