「いい天気ね。」
房姫が歩きながら、空を見上げる。
確かに太陽は出ていたが、雲が多い。
雨が降らなければいいけど、と灯世はため息をついた。
「房姫様はよくここに来られるんですか?」
「いいえ。
でも、ちょっと来てみたいなと思って。」
なんだか慣れた様子だったからよく来ているのかと思ったが、そうでもないらしい。
確かに姫ともあろう彼女がこんな険しい山に頻繁に来れるはずがない。
彼女が行きたいと思っても侍女が許さないだろう。
というか、今日もよく許しが出たものだ。
灯世のほうは、いの止めたが、房姫に誘われたと言うと渋々許された。
止められないというのが本当だ。
いのはくどいくらいに気をつけろと言って、髪を結ってくれた。
動きやすいようにという配慮が嬉しい。
「あれを登りましょう。」
そういって房姫が指したのは山のふもとに作られた、細い登山道だった。
「危なくないですか?
そこらへんの花を摘みましょうよ。」
灯世が言うと、房姫は唇を尖らせた。
「わたくしには無理だと言いたいの?」
「そうではなくて。
道が崩れるやもしれません。」
「大丈夫よ、お付きの男がいるのよ?」
そう言って、房姫は後ろに控えている男を指した。
いくら付き人でも、突発的起こった事故に対処するのは難しい。
灯世はまたまた不安になりながらも、登山道に足を踏み入れた。


