この空の彼方

「別に、話してくださらなかったのを恨んでなんかいませんよ。」



俯いた芦多の顔に添えられた手が、芦多を現実に引き戻した。



顔を上げると、哀しそうな目が芦多を見つめていた。



「だって、一度その話をしようとしたとき、芦多様の目、すごく悲しそうだったんです。」



あの時か。



芦多にも見当はついた。



氏神が地を揺らしたときだ。



「聞けば、型は散々ですし。
芦多様が自分をよく思っていないのは想像に難くはありませんでした。」



ああ、わかっていてくれたんだ。



芦多は目を閉じた。



我慢していた涙が一粒、転がる。



灯世が驚いたように息をのんだ。



驚かせた。



でも、もう我慢できないんだ。



あたたかい。



灯世がいると、作ってきた自分が壊れていく。



せっかく、ここまで強くなったのに。



ふわり、と灯世の香りがした。



背中に、灯世の腕が回る。



優しく抱くのは自分の仕事のはずなのに。



今は立場逆転だ。



「大好きですよ。
芦多様が型でも、聖人でも、人殺しでも、妖でも。」



人柄に惚れたんですから、と灯世は笑った。



その言葉が、とてもうれしい。



何度、気持ち悪いと言われようと、消えろと、役立たず、クズと罵られても、一度灯世に好きだと言われると救われる。



そんな人がそばにいてくれる自分は、どれだけ幸せなんだろう。