この空の彼方

向こうも白柄彦のことを覚えていたらしい。



「二人で思い出話に耽ったよ。」


「ご両親は?」


「ああ、いなかったよ。」



けろりとして、彼は言った。



「俺を売ったって、村人から追い出されるようにして、村を出たって。」



当然の成り行きだな、と笑う。



確かに、やっかみもあって自然な成り行きだ。



「行き先は?」


「そんなの、言ってかないよ。」



苦笑する顔が痛ましい。



「そうか…。」


「萎れるなよ。
私はかつての知り合いに会えただけでも幸せだろう?」



そうだ。



みんな、ここで生きて死んでいく者が圧倒的に多い。



「息子もできたし?
幸せだったよ。」



息子!?



そばで聞き耳を立てていた千歳達と政隆が飛び上がる。



「息子?」



にっこり笑って逃げるのを封じられた政隆が訊く。



「ああ。
女が去年産んだ。」


「そうか。
でも何も地方の女に産ませなくとも、屋敷の中でいくらでも候補はあっただろうに。」



政隆の言葉に、白柄彦は顔をしかめた。



「嫌だ。
所詮、私なぞ型から成り上がった護衛だ。
型上がりなど、種馬扱いだろう。」



生々しい。



灯世に聞かせたくなかったと隣を見たが、いつの間にかいなかった。



「灯世ならお前達が話し始めてすぐ引いたよ。」



爪鷹が耳元で囁いた。



考えを読まれるのはいい気がしなかったが、情報をもらえたのはありがたい。



片手で小さく拝んだ。