この空の彼方

「芦多様?」


「大丈夫だ。」



灯世も困ったような笑みを浮かべている。



「芦多。」



顔を上げると、白柄彦が立っていた。



隣で灯世が慌てて頭を下げる。



芦多も会釈した。



「元気か?
まあ、さっきの様子だと相当元気なようだな。」


「……。」



芦多の不機嫌さに油を注ぐ。



「飛ばされてたんだって?」


「ああ。」


「それで私がたまに屋敷に帰ってもいなかったわけか。」



ふむ、と顎を掻く白柄彦。



「貴方こそ、修行に出ていたとか。」


「ああ、修行なんて大したものじゃないさ。
口実。」



口実?



怪訝な顔の芦多に気付き、白柄彦が説明する。



「このままだったら、私は一人身のまま死んでいくと思ってな。
ほら、戦争とか嫌な噂が飛び交っているだろ?
故郷に帰ってきた。」


「故郷?
分かっているのか?」



型の人間の中で、自分の出身地がわかっている者はとても珍しい。



大抵の人間は親の顔も、生まれた場所も、覚えていない。



「私はだい大きくなってから連れてこられたんだ。
もう、六つだったかな?」


「そうか。
それはよかったな。」


「ああ。
おかげで幼馴染とも再会出来た。」