この空の彼方

もう芦多も素直に灯世に触れるようになったし、灯世も自然に芦多に甘えるようになった。



灯世が愛しくて仕方ない。



抱き寄せようとしたときだった。



パンッと誰かが手を打った。



ハッと我に返る。



灯世もおろおろと顔を隠した。



人前だったのを忘れていた…。



音のした方向を見る。



てっきり爪鷹か誰かかと思っていたが、なんと白柄彦だった。



「白柄彦…!」


「久し振りだな。
元気にしているか?」



驚きのあまり声が出ず、芦多は首を縦に振った。



「白柄彦!」



政隆が駆け寄る。



はっはっと笑って嬉しそうだ。



「久し振りにこっちに顔を出したな。」



芦多が出ている間、彼はこの屋敷にいなかったらしい。



みんながぞろぞろと白柄彦に群がった。



その騒ぎに乗じて、灯世が芦多に身体をすり寄せる。



「灯世。」



今度は腰を抱くだけにとどめる。



はた目に二人の関係は一目瞭然だが、気持ち控え目だ。



「白柄彦を覚えているか?」


「勿論です。」



灯世は微笑んで拳を握った。



「芦多様と対戦なされた方でしょう?
あの興奮はなかなか忘れられるものではありませんよ。」



そんな風に思ってくれていたのか。



灯世の様子を見て、芦多は嬉しくなった。



「大人気だね、白柄彦。」


「なんてったって、芦多に次ぐ強者剣士だからな。」


「修業の旅からのお戻りは案外早かったね。」



のしり、と三人が芦多にのしかかる。



ぴくり、と芦多のこめかみが動いた。



重みに耐えかねた灯世が腕から抜けていく。



くそう、せっかく…。