この空の彼方

「はい、敵はもうとっくに国境を越えています。」


「なんだって?」



千歳が眉間にしわを寄せる。



「じゃあさっきのは?」


「敵の偽情報です。」



灯世が手を組んだ。



「なんでそんなことわかるわけ?」



耶粗が声を張り上げる。



「使い魔です。」


「使い魔ぁ?」



聞いたことがないのか、耶粗が頓狂な声を出す。



他の青年達も知らないのか、ざわざわと周りの仲間と話し出した。



「術者に忠誠を誓った魔物だ。」



そうだな、と灯世を見ると満面の笑みで頷かれた。



芦多も自分の頬が緩むのがわかった。



ヒューとまた耶粗の口笛。



灯世が喋りながら回廊を進む。



「私の使い魔が、国境を張っていたんですが、全然変化が無くて。
おかしいと思って国中を回らせたら、もう国境を越えて六日ほどといったところでしょうか。」



「バッカじゃん偵察隊。」



千歳が悪態をつく。



それに他の者も続いた。



芦多はその中を進む。



灯世が降りてくる階段に向かった。



気付いた灯世が微笑む。



芦多が伸ばした手を取り、灯世が砂利に足をつける。



「いいのか、奥方がこんな裸足で。」


「もう、そんなこと。」



繋いだ手が力一杯握られた。



勿論、芦多には痛くも痒くもない。



「まさか今のが全力か?」


「悪かったですね、貧弱で。」



つんっとそっぽを向く顔も可愛い。



芦多は立ち止まって灯世の頬の手を添えた。



気付いた灯世も足を止める。