この空の彼方

「爪鷹、お前灯世に何吹き込んだ?」



混乱して灯世にのしかかられるままになっている芦多に変わって、千歳が問う。



「いや〜。」



ひとしきり笑ったあと、爪鷹が涙を拭き拭き、灯世の前にかがんだ。



「芦多には何の超能力もないよ。
ただ、眼力、迫力があるだけ。
大抵の人間は蛇に睨まれたカエル化するんだよ。」


「だからお前何吹き込んだんだよ。」


「いやさ、芦多の目は殺傷能力が高いねって言っただけだよ。」



またケラケラと爪鷹は笑った。



「灯世が変な風に捉えちゃっただけ。
なーんも変なこと言ってないから安心して?」



だいたい俺が芦多の怒りをわざわざ自分からかうと思う?と言う爪鷹に、千歳はそれもそうだなと納得した。



すいません、私が変なんです。



「それはそうと、そのガキどうなった?」


「んー?
これからいい子にしますってさ。」



千歳が折り畳まれた布団にもたれながら、答える。



「さーすが五歳児、折れるのが早い。」



爪鷹は満足そうに頷いた。



あの子、五歳なのか。



今初めて年を知った。



「灯世。」



尻餅をついて灯世を膝に乗せていた芦多が声を出した。



「はい?」


「そろそろ退いてくれないか?」



言われて自分の格好に気付く。



カアッと顔に血が上った。



「申し訳ありません!!」



悲鳴を上げるように詫びて、灯世は飛び退いた。



「うん。」



あわあわとどこか隠れ場所を探す。



が、整頓されたこの部屋には盾になるものがなかった。



「っとに、おもしろい奴だなぁ、灯世は。」



耶粗が不自然に顔を隠している灯世の肩をポンと叩いた。



ふるふると耶粗を見上げる。



「そして真っ赤なお顔。」