この空の彼方

そうだった、この部屋にはまだ爪鷹さんが残っていたんだった。



驚きつつ、爪鷹を振り返る。



「さっきまであの子にも寛大だったのに、灯世に生意気した途端にお仕置きだ。」



お仕置き…!?



灯世はバッとみんなが出ていった障子を振り返った。



四つ、影が見えている。



小さい影は考えるまでもなくあの子のもので、前には芦多らしき人物が立っている。



しかし、無言だ。



千歳達の様子だと、てっきり説教をするのかと思っていたが、声が聞こえてこない。



「お仕置き、ですか?」


「うん。
きっとあれがあの子には一番怖いお仕置きだと思うよ?」



わかっていない灯世を見て、爪鷹は優しく説明してくれた。



「あのね、千歳とかに怒鳴られて怒られるのが怖い子と、芦多みたいな奴に冷酷に怒られるのが怖い子とがいるんだ。」



芦多を冷酷呼ばわりされるのは引っ掛かったが、この際は仕方ない。



「まぁ、芦多はいわば重石の役割だね。
あの人、自分の感情に左右されて当たるような真似しないし。」



灯世の様子に気付いて、爪鷹が言い添える。



バレた、と灯世は頭を掻いた。



「さっきは灯世の為に感情的になっちゃったけど。」


「ごめんなさい。」


「いやいや、責めてるわけじゃないんだよ?
むしろ感謝してる。」



にっこり微笑みかけられ、灯世は首を傾げた。



彼らの間に入り込んだので憎まれこそすれ、感謝される覚えはない。



本当に、灯世は彼らから芦多を奪った形なのだ。



彼らを見ていればわかる。



お互い、誰かが欠けたら意味がないのだ。



……芦多はそういうところにやや無頓着な気があるが。 



「どうして?」



思わず敬語が抜けた灯世に、爪鷹は笑いかけた。