どうやら千歳が戻っていると言ったのは芦多の部屋らしい。
中では叫び声と、物音が止まずに聞こえてくる。
芦多が沈痛な面持ちで障子を開けた。
別に荒々しく開けたわけではないのに、中で暴れていた少年だけでなくそれを追い掛けていた三人も固まる。
灯世はすごいなと舌を巻いた。
「……貴様ら、私の部屋で何をしている?」
それを聞いて、思いつくのはただ一言…恐い。
「餓鬼。」
芦多が言うと、違う言葉に聞こえる。
むしろ凶器だ。
そう感じたのは灯世だけではないらしく、少年は凍り付いたかのように芦多を見つめたまま固まっている。
三人はそろそろと壁際に避難した。
ちょいちょいと手招かれ、灯世も倣う。
「座れ。」
低い声で命令され、少年は膝を折った。
高速で。
すごい…。
芦多が部屋を見回してため息をつく。
布団は吹っ飛び、書物は散らばり、硯は畳に転がっていた。
芦多が何を考えているかわかった灯世は立ち上がって物を拾う。
芦多はそんな灯世をみとめ、微笑んだ。
千歳達も硬直が溶けて手伝い始める。
少年は座ったまま恐々と芦多を目で追っていた。
「言っとくけど俺らは止めてたかんな。」
「あいつが俺らを舐めてんだ。」
千歳と耶粗が唇を尖らせる。
「知ってる。」
芦多も呆れて頷いた。
「爪鷹、大丈夫か?」
呼ばれた爪鷹は笑顔で振り返った。
よく見ると頬が引きつっている。
「あいつ、子ども嫌いでさ。
叱ろうとすると本気でキレちまうから、ああやって我慢すんだ。」
耶粗がこっそりと耳打ちする。
それを聞いて灯世は呼吸が止まった。
……それは一番タチが悪いのでは。


