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大変なことになった。
灯世は部屋に戻りながら、唇を噛む。
この数年、戦がいつ起こるかヒヤヒヤしていたが、とうとうだ。
三芳ノ国は戦争など久し振りのことで、最新の知識や心構えがまったくと言って良いほどない。
国民達もよもや自分達が駆り出されるだなんて思いもしていないだろう。
何の為の守護者だと責められるだろうな。
どうやら貴族の中で、守護者の役割を違えている人々がいるようだ。
もちろん、その他諸々の国民達の中にもいることだろう。
守護者に出来ることは結界を張って屋敷を守ることくらいで、何も根本から戦争を無くすことは出来ない。
これからのことを考えてため息が出た。
「まったく、ため息なんてつかないでちょうだい。
縁起の悪い。」
隣の八重にたしなめられ、灯世は肩をすくめた。
「母様、私、芦多様のところへ行って来ます。」
「まったく、もう。
あまり遅くなったらまた辰之助様のご機嫌を損ねますよ。」
皆まで聞かず、灯世は早足に歩き出した。
後ろから八重のため息が追い掛けてくる。
聞こえないふりをして、灯世は更に足を速めた。
人通りが少なくなってくると、小走りになった。
早く伝えなければ。
その思いが灯世を走らせた。
型の住みかに近づくにつれて、何やら声が聞こえてきた。
角を曲がると、稽古場で四人がそれぞれ武器をふるっていた。
「あー、灯世!」
気付いた千歳の声でみんなも動きを止めて灯世を見上げる。
芦多を見つけ目が合うと、芦多は微笑んだ。
どきん、と胸が高鳴る。
「どした?」
問われ、はっと我に返る。
「海澱が攻めてきます。
皆さん、駆り出されるかも…。」
あれ?
反応が…。
「知って…る?」
「あぁ、実はな。
千歳が盗み聞きしたってよ。」


