この空の彼方

自分でも上手く笑えていないのはよくわかる。



実際、筋肉が痙攣するようにピクピクとしか吊り上がらない。



それでも、気分を悪くなんかしていないよ、と伝われば、と必死で笑った。。



すると、灯世は安心したように微笑んだ。



そして。



そして、今度は、自分も微笑みかけてきたのだ。



あたたかかった。



今まで、実の親にさえもらったことのないあたたかさ。



ふわりと、身体が軽くなった気がした。



涙が出そうになって、俯こうとした時、灯世がハッと前を向いた。



それをいいことに、何度か目をしばたたく。



涙はこらえたが、目が潤むのは我慢出来なかった。



「失礼いたします。」



灯世がそう膝を折った時は、ホッとしたし、寂しくもあった。



何やら、外では灯世が誰かと話している。



しおれているようだから、怒られているのか。



そう思って見ていると、灯世がもう一度チラッとこっちを見た。



今度はさようなら、という意味で微笑むと、灯世はスッと歩いて行った。



あぁ、行ってしまった…。



無意識に頭に浮かんだ『残念』という感情に、芦多は慌てた。



どういうことだ。



私には、人との馴れ合いなど必要ないのに。



目をきつくつむり、芦多は雑念を追い払った。



そうだ、自分は辰之助の型だ。



型は、自分を持ってはならない。



そして、自分はその型として生かされている。