この空の彼方

違う。



「稽古中くらい」じゃあない。



「稽古中」でも、俺はあの子を探してるんだ。



俯く芦多を残し、政隆は今度こそ去って行った。



ドサリと縁側に腰を降ろし、ため息をつく。



こうなったのもついこの間、あの子の夢を見てからだ。



あの日の夜。



あの夜は最悪だった。



突然、辰太郎に呼び出され、叱られた。



大事に育てられていた柿の実が、辰之助によく似た者に荒らされたというのだ。



辰太郎は自分の息子ではないと言い張り、結局無実の芦多が罰せられることとなったのだ。



夜会のついでに賄い飯も豪華なはずだったのに、その夜芦多の食事は抜きだった。




他の型の者たちと楽しくわいわいと夜を過ごすはずだったのを、たった独り、他の部屋とは離され関係者以外入れない人通りの少ないあの『型』の人間ばかりが集められた暗い部屋で過ごした。



辰之助の型となる少年は自分のほかにもたくさんいた。




なのに、どうして自分だけ?



その答えは今になっても見つからない。