数日後、芦多は再び灯世のもとへ向かった。



もう、辰清の葬儀は済んだ後だ。



灯世も一人でいるに違いない。



千歳にどうして一緒にいてやらなかったと散々喚き散らされた芦多は、少し気後れしたが、勇気を出した。



いつものように縁側に座っている灯世に声をかけた。



「灯世。」



灯世は、木の陰から現れた芦多に、ゆっくり目を向けた。



「芦多様…。」



声は明らかに弱っていた。



「来て下さると思ってました。」



待っていたと、灯世は言う。



それに少し罪悪感を覚えた。



芦多は黙って灯世の隣に座る。



「……大変だったな。」


「大変だったのはあの子です。
苦しかったろうに。」



芦多は腕を伸ばした。



灯世はゆっくりと芦多の腕の中に身を預ける。



「泣いていいぞ。」


「泣きません。」



そうは言ったが、声は震えていた。



「どうして?」


「ここでは、泣きません。」


「そうか…。」



どちらにしても、芦多に出来ることは灯世を抱き締めることだけだ。



芦多は優しく灯世を抱いた。



「駄目ですね。
芦多様といると甘えたくなってしまいます。」


「甘えればいい。
私は受けとめる。」



腕の中で灯世は首を振った。



「私は強くなりたい。」


「私に言わせれば、灯世は十分に強い。」



まだまだです、となおも首を振る。