この空の彼方

「これが、そうですか?」



震えるいのに、灯世は頷いた。



「逢瀬を重ねることが?」


「いやいやいや、話聞いてた?
芦多はこないだやっと帰ってきたの。
会うのは三年ぶりだって。」



いのはハッと芦多をみた。



「あの噂は本当だったのですね?」


「ああ。
辰之助様に飛ばされた。」


「灯世様…。」



いのにだって感情はある。



むしろ、灯世と仲が良かったのだ。



「わたくし…。」


「黙っていて。」



いのは唇を噛んだ。



「どちらに従えば?
わたくし、言いたくはないけど、辰之助様から灯世様の監視を仰せつかって…。」


「きったねぇ!」



千歳が爆発する。



「芦多が帰ってくるって灯世に伝えたかったんだけど、衛兵いて言えなかったし!
なんだよあのクソ馬鹿野郎!」


「千ー歳。」



爪鷹が千歳の肩に手をかける。



「いの。
勿論、辰清は大切よ。」



いのはふるふると頭を振った。



「信じたくない!
辰之助様がそんな…。」


「本当なのよ。」



灯世は目を伏せた。



「私だって、信じたくなかった…。」



優しい辰之助のままでいてほしかった。



余計に憎い。



どうしてあの優しい辰之助のままでいてくれなかったのか。



「ねぇ、黙っててくれるね?」



爪鷹がいのの正面に回った。



いのが怯えたように身を竦ませる。



「灯世。」



呼ばれて見ると、目を隠された。