この空の彼方

鋭い音が辺りに響き、互いの剣が交差する。



「相手の動きをよく見ろ。」



芦多は顔を険しくしかながら、必死で政隆の槍を受けた。



もうそろそろ白髪が混じり始める年なのに、政隆は一向に衰える気配はない。



しわ一つなく、足腰もしゃんとしている。



一体、いつになれば芦多は政隆から一本とれるのか。



思い切って剣を突き出した時だった。



稽古場に面した廊下を、着物を着た少女が通った。



あ………。



もしかしたら…!



一瞬にして、芦多の注意はそちらに向いた。



あの子か?



この間一度だけ、一度だけ会ったあの子かもしれない。



鋭い金属音が芦多の耳をついた。



「あ!」



稽古のことなど、忘れていた。



そして今、剣は遠くに弾き飛ばされていた。