この空の彼方

芦多が素早く立ち上がる。



横顔は、殺気に満ちていた。



「やめて!
芦多様、待ってください!」



芦多は灯世の静止に動きを止める。



「私が話します。
いい人なんです。」


「…わかった。」



そう言いながらも警戒は解かず、芦多は灯世といのの間に立ちふさがるようにして立った。




「いの、聞いて。」


「聞きたくありません。
辰之助様という旦那様がありながら、どうして他の男と…。」


「わけがあるの。」



嫌だ、といのは首を振った。



「聞きたくありません。
そこの男、灯世様から離れなさい!」


「いの!」


「灯世様、お気をしっかり!
その男は灯世様を奪おうと…。」


「実際に奪ったのは、あんた言うところの旦那様だけどね。」



灯世はハッと声の方を見た。



芦多は平然としている。



「千歳さん?」


「…悪趣味な奴め。」


「だってさぁ、結果的にお前ら覗き見てたら助けになってんじゃん?」



悪びれもせず、千歳が言う。



灯世は見てたんですか!?と顔を赤くした。