この空の彼方

「灯世。」



呼ばれても、顔を上げることが出来ない。



嗚咽にまみれ、声も出せない。



グッと身体が引っ張り上げられる。



「灯世…!」



芦多の腕に身体が収まる。



この感触、この匂い。



そして、この声。



芦多だと実感する。



「会いたかった。」



懸命に頷く。



「ずっと、忘れなかった。」



灯世も精一杯しがみつく。



「ただいま。」



優しい、声。



これには、答えたかった。



答えようと決めていた。



灯世は泣きながら、言った。



「お帰りなさい。」



一層強く抱きしめられる。