「おい、政隆。」
呼ぶと、政隆は素振りをしていた手を止めた。
「おお、千歳。
と、灯世殿?」
隣で灯世が頭を下げる。
「お久しぶりですな。」
政隆の顔から汗が滴る。
それを拭って、政隆は千歳達に近づいてきた。
「千歳がわしのところに来るのは珍しいな。」
「琿坐は今休みなんだ。
俺に稽古をつけてくれよ。」
「む。
わかった、ちょうど空いている。」
政隆は長槍を引きよせた。
「灯世、見てろ。」
「はい、頑張ってくださいね!」
灯世の笑顔に励まされる。
稽古場に降りると、政隆も千歳の向かいに立った。
「上手いこと連れ出したな。」
政隆が小さい声で言う。
「だろ?
俺って天才。」
「うむ。
芦多に代わって礼を言う。」
芦多、という言葉を聞いて、胸が痛む。
違う…俺は、芦多の為に灯世を連れ出したんじゃない。
………俺の為、俺の勝手なんだ。
政隆はそんな千歳の葛藤に気付かず、いくぞと槍を構えた。


