この空の彼方

灯世は火鉢の横に座った。



芦多も用意された座布団に座る。



「久々にこうやってゆっくり話せますね。」



灯世はふふっと笑った。 



「そうだな。
最近、灯世が忙しくなったからな。」



皮肉のこもった芦多の言葉に、灯世はぽりぽりと頬を掻いた。



「はい。
いきなりなので、少し戸惑っています。」


「確かに。
私がもし灯世になったらきっと音を上げる。」



あながち冗談でもなさそうな芦多に灯世はくすりと笑った。



その後も、会えなかった数日を埋めるように他愛のない話をした。


徐々に話も盛り上がり、二人がお互いに慣れてきた頃、来訪者がやってきた。



「灯世様。」



侍女の声が廊下から聞こえ、灯世はビクリと身を強張らせた。



「はい。」



灯世が返事をすると同時に芦多は音もなく立ち上がり、隠れ場所を探す。



「辰之助様が。」



辰之助様?



芦多と顔を見合わせる。



芦多は隠れるのも忘れて侍女の影を見つめた。



と、影が一つ増えた。



「灯世、入ってもいいかな?」



芦多は顔を強張らせ、押し入れに飛び込んだ。



湯飲みを一緒に隠すことも忘れない。



「どうぞ。」



芦多のオーケーサインが出てから灯世は声をかける。