この空の彼方

「芦多ぁ、お前も灯世といちゃついてないでさっさと来いよ。」



くるりと千歳が振り向いた。



そうだそうだと声が上がる。



「これは、灯世が調子を悪くしたからで…。」



灯世はあわあわと慌てる芦多から身体を離した。



「申し訳ありません。
私が芦多様の手を煩わせて…。」


「灯世に責任をひっ被せてんじゃねー。」


「そうだそうだー!」



一体なんの宗教集団だ。



そこに辰太郎の怒声が響いた。



「ふざけとらんとさっさと結界を張ってこい!」



ふるふると震えて、辰太郎は灯世を睨んだ。



「お前は守護者だろう!
私を護るのが役目だろう!」


「結界は保っています。」



弱々しく答えた灯世に悪態をつき、辰太郎はどすんと座った。



「灯世、行こう。」



芦多に背中を押され、灯世は千歳達に続いた。



「ったくあのオッサンはよぉ。」



廊下に出た途端、千歳が辰太郎を罵った。



「灯世、戦ったら勝てるって。」


「灯世に謀反を勧めるな。」


「えー、勧めてないもーん。」



気色悪い、と蔑んだ視線を送り、芦多は灯世を遠ざけた。



「芦多、俺らはどうしたらいい?」



芦多の同僚らしい一人が言った。



「等間隔に並んで、魔物の方に照準を合わせろ。」


「はいよ。」



灯世は唖然とそのやりとりを聞いていた。



怖くはないのか?



自分など、気配を感じただけで竦んでしまうのに。



術を使えない彼らの方が強く見える。