天井に映る影がいつの間にか色を失っている。

急に肌寒さを感じて数回くしゃみをした。


そういや裸のまんまだっけ。


もそもそと起き出して散らかしてあった下着を着けていく。


女の下着は着る、と言うより 装着する、の方が相応しい

と渚は思っている。


女達は外で闘うために鎧を着け、自らを奮い立たせるのだ。

ブラジャーのホックを止めると、ぱちん、とどこか自分の中でスイッチが切り替わる音がした。


だぼだぼのパーカーを被りながら思う。


きっとこうすることで、あたしたちは日常へと戻っていくのだ。


襟首から頭を出して外を見る。

もうすっかり暗くなっていた。


消えたままの部屋の電気をつけようとして

隅で何かが点滅していることに気が付いた。


布団に半ば埋もれかけている携帯から

ピンク色の光が漏れていた。



…メール?


寝てたから気付かなかったのかな

と思いつつ携帯を開く。

差出人の名前が目に飛び込んできた。



 片倉冬夜 



「………めずらしー…ね」


冬夜とはつい一昨日会ったばかり。

普段はニ週間に一度会えば多い方だ。


用がない時はお互いほとんどメールもしないので、会ったばかりにメールが来るということはまずない。


たぶん今までも片手の指で数えられるぐらいの回数しかなかっただろう。


少し緊張しながら開封する。



 今度の土曜日あいてる
 ?カンジが茨城から帰
 ってくるみたいで、花
 南とか5~6人で集まろ
 うって言ってんだけど
 渚もどう?


――きっと カンジも 渚が来たら 喜ぶよ――



「カンジ……かぁ……」