神楽幻想奇話〜鵺の巻〜

体を拭いて服を着た透は、ヒリヒリと痛む左頬を押さえながら洗面所から出てきた。

(ん?飯の匂いがする…。)

ふわりと食欲がそそる匂いに釣られていくと、ソコには美味そうな食事が用意されていた。

キッチンを眺めた。
そこに忍がエプロンを着けて立って居るところを見ると、彼女の作品だろう。

沙綺はすでに彩音と食べ始めていた。

「おー、神楽も食えよ!忍の飯美味いんだぜ?」

沙綺は箸を上げて透を呼んだ。
彩音もこちらを向くと、お兄ちゃんも食べよぉ!と手をパタパタ振ってきた。

透は黙って席に着くと、押さえてた左手を降ろした。

「ぶーあっはははあんた何だそのツラ手形バッチリじゃねーか」

沙綺が透の顔を見て味噌汁を吹き出した。

透は何も言い返せないで居ると、隣の彩音が頭を撫でてきた。

「よしよし、痛かったねぇ〜。」

透はなんとなく切なくなった。