神楽幻想奇話〜鵺の巻〜

鵺は洞窟の中に低い笑い声を上げると、のそりと立ち上がった。


湿った空気を掻き分けながら洞窟の出口へと歩みを進め、夜風を感じながら次第に人型へと変化していった。


「まずはあの方への報告に行かねば…これ以上の失態は許してくれまい。」


鵺は暗闇の部屋に居る主の姿を思い出して身震いした。


鵺は主と実際戦った事はない。
孤独を好み、他の者には好戦的な鵺だったが、彼には刃向かう気にはなれなかったのだ…。


初めて出会った時に感じたのは、圧倒的なまでの絶望感だった。


自分が生まれる以前の古代日本史に、ある大妖怪が主に戦いに挑み…そして敗北したという記録があった。


鵺が挑む気になれなかったのは、その妖が自分よりも強大で有名だったから。
その妖ですら勝てなかった主に、自分は歯が立たないことは、やらずとも解ったからだ。


悔しさを噛みしめながら、鵺は主に報告するために夜空へと飛び上がった。