神楽幻想奇話〜鵺の巻〜

沙綺は部屋に向き直ると中に声をかけた。

「御館様、沙綺です。
妖の討伐と神楽 透の捜索を終えて帰りました。」

沙綺がそう言うと、一呼吸あけた後、中から柔らかな口調の女性の声が聞こえてきた。

「おお、沙綺か…待っておったぞ、早く入りぃ。」

沙綺はその返事を聞いた後、障子の扉をスーッと静かに開いた。

透は横から中の様子を見た。
部屋はきれいな和室で、奥には生け花と掛け軸が飾られている。そして、白い着物を着た女性が座っていた。

「……?。何ボーっとしてんだよ。早く入れって。」

透は沙綺に軽く背中を押されて、中へ足を踏み入れた。

御館様は、自分の前に透が座るのを確かめてから、ゆっくりと話し始めた…。

「遠路はるばるよぅ来たねぇ…。
貴方の事は僧正殿から聞いておりますよ…。」

透はいきなり聞き覚えのある名前が出て、少しビックリした。

「あの、…え……と…御館様は爺様の事知ってるんですか?」

御館様は少し笑いながら答えた。

「ふふふ…、いややわぁ御館様だなんて。
それはウチの子達からの呼び名やさかい、そう呼ばんでええよ。
名前は白蓮(びゃくれん)言います。」