神楽幻想奇話〜鵺の巻〜

「じゃあ、そういうことで!俺行くわ。」

男は透に背を向けて言うとバイクの方へ歩きだした。

「待ってくれ!一つだけ聞きたい。」

透は歩き去ろうとする男を呼び止めた。

「なんだよ?まだなんかあんのか?」

男は振り返ると、片眉だけ上げて透に聞き返した。

「お前は退魔士なのか?」

「…………………。」

その質問に対して、男は黙ったまま透に近づいた。

「あんた何者だ?
普通の奴なら退魔士なんて言葉簡単に出るもんじゃないぜ?
……答はYESだ。」

男はポケットに手を突っ込んだまま、透の顔をのぞき込むように答えた。
おそらく手には、あの紙切れを握っているに違いない……。

透は言うべきか少し迷ったが、この男なら信用できると感じ、打ち明けることにした。

「俺の名は、神楽 透…。多分、お前の探してる男だ。」