神楽幻想奇話〜鵺の巻〜

「まぁ…今の事は見なかったことにしてくれ。
襲われそうになってるあんたのこと助けたんだ、安いもんだろ？」

男は髪を雑に掻き揚げながらそう言った。

「ん……？ああ…、しかし今のは何だったんだ？」

透は体についた砂を払いながら男に聞いた。
男はその問いかけに対して、何と答えていいものか困った表情で話始めた。

「あんたに言っても信じちゃもらえないだろうけど、あいつは化け猫だ。
人間が一人で居る所を狙って襲いかかり…食う。
大抵の人間が油断するように、子供に化けてる奴が多いってわけ。」

その説明を聞いたら、大半は変な顔で男を見るだろう。
だが、透はいたって普通なまま、「気づかなかった。」と答えた。

それが逆に男にとってはおかしく見えた。

「あははは！あんた変な奴だな！
普通はビビるか怪しい人を見る目に変わるもんだぜ!?
それを「気づかなかった。」なんて面白すぎるぜ！」

男はよほどおかしかったのか、目に涙を浮かべるほど笑った。
その様子を見ていた透は、なぜ笑っているのかよく分からなかった。

男がようやく笑い終えた頃、男の肩に一羽の小鳥が舞い降りた。