「して…神楽は今どこにおるのじゃ?」

再び目を開いた御館様が御影に尋ねた。

「はい、現在は町外れにある神社の方へ向かっています。
私の式神が監視しておりますので間違いありません。」

「そうか、その方角は先程別の者からの報告で妖が侵入したと聞いておる。
沙綺(さき)を向かわせておるから、お前の式神で神楽を連れてくるように通達しぃや。」

御影は頷くと胸ポケットから細長い紙を取り出し、外へ向かって投げた。
紙はまっすぐ外に飛んでいくと、空中で小鳥へと変化してパタパタと羽ばたいていった……。

それを確認した後、御影は御館様に向き直り、話を続けた。

「神楽を連れてきて、どうなさるおつもりで?」

少し疑惑の眼差しで見てくる御影に対し、御館様は優しげに答えた。

「神楽は何かの理由で遠野を出たのじゃ…。
その理由は間違いなく僧正殿の言いつけじゃと私は思う…。
その目的が聞きたいだけじゃ。」

御館様は目を細めて笑った。

だが、御影にはそれ以外の目的があるように感じられたのだった…。