「…何の事だ!?」

僧正は一瞬間をおいて答えた。

鵺はにやにやしたまま続けた。


「我が宿敵、神楽一族…。知らないと思いましたか？
私との戦いで苦戦を強いられた玄奘が考える事など、たやすく分かります。
そう、例えば我が子を自分より強い退魔士にする…とかね。
そのためには生誕の儀、伝承の護摩をする必要がある…。そうでしょう？僧正。」


「……………。」


「ｸｯｸｯｸ何も言い返せませんか…？今ならまだその子も退魔士にはなり切れていないはず、危険な芽は早めに摘まなくてはなりません。
仲間にするか、それとも殺す…か。」

そう言うと、鵺は僧正の回答を待った。鴉天狗と言われた男は腕を組み、壁に背をもたれ掛かかせて立っている。

僧正は、ゆっくり話し始めた…。


「さぁな…。確かにそんな話しもあったかもしれん。
だがここにはその子はおらん。
とっくの昔に山を下りていったわい。
…お前等は里の者をどうしたのだ？」

僧正の話を黙って今まで聞いていた屈強な男が口を開いた。


「おう！全員ブチ殺してやったぜ！里には一人も生きちゃいない、もうジジイだけだ！わっはっはっ！」