「だが、まだお前には退魔はできんなぁ…。犬神の力を全く引き出せていない。
母親の能力は大体引き出せてはいるものの、修行が足りんな。」

透は何も言い返すことが出来ず、苦い思いだった。

その時である……。

ダダダダダダダダ!

「大変です僧正!里が妖に襲われております!」

今日の見張り番の僧兵が息を切らせながら走ってきた!
彼自身、頭や手から出血している。

「何だと!?数は!?」

僧正は立ち上がると拳を握りしめた。

「は!現在分かっている数は2体です!ですが、非常に強力です!今この大寺院には結界を張って参りましたが、いつまでもつか!?」


「くっ…!何奴だ、この場所まで来るとは!すぐに参る、それまで保たせるのだ!」

「はっ!!」

ダダダダダダダダ!

そう言うと僧兵は再び戦地へと帰っていった。
僧正は透に向かうと、こう言った…。

「お前はここで、変化して隠れておれ、母親の技なら見つかる事は無い。一族にとってお前を失うわけにはいかんのだ。」

僧正の強い眼差しに飲まれた透は頷く事しかできなかった。

そして広場の片隅で透は僧正の言いつけ通り、仏像へと変化した。