逆側の歩道にいる女性が棒立ちで目を見開き、手で口を覆っている。

道路に転んだ幼稚園生ほどの子供が泣き声をあげている。


それでも圭太は未だ状況が掴めない。

自分でも知らないうちに車のドアを開け、事故の現場へと足を進めていた。





―まさか、そんな、きっと違う・・・






赤い顔で虚ろな目をした男がおぼつかない足取りでトラックの運転席から降りてきた。

どこからか結構な数の野次馬が集まって、現場を囲むような歪な形の円ができていた。




そんなことに気付きもしない圭太の視線は、道路上に投げ出され散らばったものに釘付けられている。



―あの携帯は、一弥と同じ機種のものじゃないか。
ついているマスコットまで同じだ。

ああ、あのカバン、一弥が昨日、俺の家に抱えて持ってきた。
中には着替えと参考書と、それから何だっけ――。

そしてそれらの横には、うつぶせに倒れている、血まみれの―――。