出だしはかなりよかった。よすぎたくらいだ。

 いつもなら目覚ましやケータイのアラームをかけても遅刻の多かった俺が、その日はなぜか鳴る時間の三十分も早く起きれてしまった。


 数日前から始まった一人暮らしで、こんなに早く起きれたのは奇蹟といってもいい。

 おかげで、準備も朝食も余裕を持って出来た。
 これを親に見せたら、たぶん泣いて喜んだと思う。なんせ、俺が一人暮らしすることにかなり渋っていたからな。


 サラリーマンや学生がぎゅうぎゅう詰めのラッシュを覚悟していた電車も、思ったよりも苦労なく目的地に着いた。



 本当に順調だった。

 桜の花と黒猫に魅入られるまでは・・・・・・