なのに奴は俺の拳を受け止め、しかも軽口を叩く余裕まであった。不意打ちであれなのだから本気でやり合ったら、俺は簡単に負けてしまうだろう。

「嫌味な野郎だ」

 外見も声も喧嘩も、どれも俺を上回るムカつく奴。
 もう二度とあいつと顔を合わせるのはごめんだ。



「で?その潰れアンパンピンクバージョンはどしたの?」

「あ゙?」

 相馬に指された右手を見ると、先ほど渡された桜餅が四方八方から餡子が飛び出していて、あまりおいしそうとは言えない状態になっていた。

「げっ!」

「どうすんだ?食うのか?」

「・・・・・・・・・」


 あいつから渡されたもの。非常に不愉快だが食べないのはもったいない。
 しかも朝から変な相手に会ったせいで、脳が疲れて糖分を欲しがっている。

 結論、桜餅に罪はない。


 俺は、一分も掛からず結論を出し、潰れアンパンならぬ潰れ桜餅を口に入れた。

「うめぇな」

 微かに桜の香りがするそれは今まで食べた桜餅の中で一番美味かった。