「分かった、俺が言う...お前のこと俺が伝える」
「やめろ!!」
俺は兄貴の胸元を掴んだ。
「…俺が伝える…」
琉汰の後ろ姿は、辛そうにみえた。
「…千冬…」
【…!!…】
「琉汰…」
ずっと聴きたかった懐かしい優しい声に
私の胸が激しく動きだした。
「ここにいる」
俺は膝まつき千冬の手に触れた。
「…手が冷たいな」
「そう?」
「元気そうでよかった」
「うん…」
「…必ず幸せになれよ…」
「琉汰も…」
千冬の手が震えていた。
「兄貴を任せた…」
「えっ?」
「じゃあ…元気で」
そう言って琉汰は、私の手を離した。
【これでいい…】
【後悔…しない…】
千冬と離れ…
琉汰と離れ…
2年の月日が過ぎていった。
琉汰からは、一度も連絡もなく行先さえも嘘だった。

