何も見えない中で私は、浩介が引く方へと走っていた。
【!!…】
浩介は、突然止まり私は、浩介にぶつかった。
「…千冬…少しここに座って待っててくれるか」
「…浩介?」
「すぐ側に居る…直ぐに戻るから…」
「…うん」
私は、浩介に支えられながら、椅子に座った。
浩介は、私の頭をポンポンと叩くと浩介の靴音が、離れていくのが分かった。
「琉汰…」
チケットを持つ手を強く握ると同時に俺の名前を兄貴が呼んだ。
「兄貴……ごめん…」
「…千冬来てる…」
【!!千冬…】
俺の心臓が激しく動きだした。
俺は、周りを見渡し千冬を探した。
【!!】
「…千冬…」
不安そうに千冬は、椅子に座っていた、迷子になった子供の様に怯えているのが分かった。
「…なんで連れてきた…」
「琉汰!!黙って行くのか!?また、黙って消えるのかよ!!」
兄貴は、俺の胸元を握りしめ言った。
「…俺は……陵は、喋れない…」
俺は、千冬に背を向けた。

