『浩介!』
千冬は嬉しそうに兄貴に手を振り俺の腕から離れ兄貴の元に走り兄貴を抱きしめた。
『卒業おめでとう!これで千冬も立派な大人の女性になれるな!』
『なにそれー?!私は今でも立派な女性よ!』
俺は、少し離れた場所から千冬と兄貴を見ていた。
あの頃から…いや、その前から兄貴は、千冬を想っていたんだ…。
【…今の俺には、千冬を幸せにしてあげられない…兄貴…兄貴だったら千冬を幸せにしてくれるか…】
「よし!今日の検査は、これでおしまい!」
浩介は、そう言って私の左肩を叩いた。
「ありがとう、今日は結局陵君…来なかったね」
私は、眼の回りを軽くハンカチで拭いた。
「あぁ…用事が長引いているのかな…」
浩介の声のトーンが下がった。
「もう、私も一人で歩いて行かないといけないし…人に頼るのは良くないよね!もっと強くなって!もっと頑張ろう!」
私は、見えない浩介の顔に笑顔を見せた。
「…無理に頑張らなくていい…無理に笑顔もみせるな…千冬のペースで前に進め…」

