翌日、私は、いつもより早く支度を終え、ソファーに座っていた。
「千冬、今日は早いのね…いつもは、迎えが来てもバタバタしてるのに」
お母さんは、私の髪の毛を触りながら言った。
「うん…いつも待たせて悪いから…」
「…そう」
「…ねぇ?お母さん…」
「なに?」
「…陵君って…どんな顔なの…」
髪を触っていた、お母さんの手が止まった。
「………」
「お母さん?」
「…どうしたの?突然そんな事…」
「うん、何となく気になって…」
「…かっこいい顔をしてるわよ!目も大きいし!背も高い!いい男性よ!」
【………】
「なんだか…琉汰みたい…」
「えっ!?」
「……琉汰も、かっこいい顔してた…目、鼻…それに背も高くって……」
私の真っ暗な瞳から、涙が流れた。
「千冬…」
「…ごめん…お母さん…」
「…いいのよ…」
お母さんは、私の頬の涙を拭いた。
〔ピンポーン!〕
【…!?】
「…陵君…かしら」
「…………」
お母さんの歩く足音が、玄関へと遠退いていった。
私は、耳を済まし、お母さんの声を探した。
【………】

